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有害な藻の異常発生 ‐ 知っておくべきこと全て

著者: ステファニー・スミス

Aquaculture Environmental Monitoring & Analysis Harmful Algal Bloom Mitigation Analytics Japan Blog

Japan Blog: 有害な藻の異常発生 ‐ 知っておくべきこと全て

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有害な藻の異常発生(HAB)は水源管理者にとって頭の痛い問題です。水体の健康を守る為には、この問題について理解し、いつ発生するのかを知り、管理不能となる前に行動を起こすことが大変重要です。


YSIプロダクト・マネジャーのステファニー・スミスがこの問題についてのエクスパートとして、こちらのブログでHABについての広範な知識と、積極的な管理方法についての秘訣を共有します。

有害な藻の異常発生(HAB)とは何か?

先ずは HAB(Harmful Algal Bloom)、つまり『有害な藻の異常発生』というフレーズに立ち返り、理解を深めましょう。『異常発生』は藻類の異常増殖を意味します。爆発的繁殖が非常な速さで起こるため、異常発生という言葉がよくフィットします。異常発生はモニター地点によって様子が異なり、その外観は一日を通しても変化します。これは藻類が成長と死を繰り返したり、水中を鉛直方向に移動する性質を持つからです。HABについて考えるとき、ミクロキスティス・エルギノーザのような膜形成を想像する方が多いようです(図1)。このような異常発生は淡水に見られる一般的なもので、ミクロキスティスや他の生物、またはそれぞれが混合したものの結果です。

最近は異常発生がよく見られるようになりました。しかしながら、シリンドロスペルモプシスの異常発生のように(図2)一見泥水のようにしか見えなくても、相当な成長をしているケースがあります。またプランクトトリックスの異常発生は、鉛直方向に広範に分散するためこのように見えることがあります。

algal-bloom-fig02-2.jpg違うように見えても、どちらの場合も(図1、2)こういった異常発生は毒性があり、飲料水に影響を及ぼしかねません。更に、管理不能となる前に検知することが非常に困難です。

『有害な藻の異常発生』というフレーズに戻り、藻類とは何かについてお話しましょう。HABの文脈において、『藻類』という用語は非常に広い範囲の生物を差しますが、特にに渦鞭毛藻類、珪藻類、シアノバクテリアを意味します。シアノバクテリアは淡水HABの議論に最も関係があり、『藍藻類』としても知られています。

シアノバクテリアの異常発生における難題は、図1に非常に似て見えることですが、毒性を発するシアノバクテリアにより発生したとは言い切れないことです。例えば、シアノバクテリアでユレモによる藻類異常発生は、図 1 に見られるアオコ異常発生に酷似していますが、顕微鏡下では ユレモの長繊維状細胞形態は、ミクロキスティスの微小コロニーとは簡単に区別ができます。 これら生物は別の重要な意味でも違いがあります。

例えば、ユレモは空中窒素を固定することができるため、窒素が枯渇した環境下でも自律的な成育を維持することができます。 しかしアオコは窒素の固定を行うことができませんので、異常発生レベルの成長には高濃度の窒素の供給を水中から得る必要があります。そのため、どちらのシアノバクテリアが存在しているかが、どういった種類の栄養物が異常発生に貢献しているのかを知る手がかりとなります。窒素固定をしているのか、していないのかに関わらず、藻類の栄養物となるのがリンです。但し、ユレモの異常発生と、ミクロキスティスによる異常発生の最も気になる違いは、後者が悪名高い毒生成物であり、その毒が人間を含む動物全体に有害であり得るということです。

実は、『有害な藻の異常発生』の『有害』はもともと、毒素の生成に基づいています。このため『毒性藻の異常発生』と呼ばれることがあります。毒素ミクロシスチンは最初にミクロキスティスより確認され、現在もっとも拡散し、動物の肝臓癌を引き起こし、慢性被曝により人間にも同じ影響があるとされています。家畜と野生生物にとって深刻で、生命を脅かす毒であるミクロシスチンはミクロキスティス以外の生物からも生成されることが知られています。アナトキシンとシリンドロスパーモプシンはその他の毒素として各地で観察されています。藻類の毒素は何種類もありますが、これら3つが淡水HABにおける最も一般的な有害物質です。

algal-bloom-fig03-2.jpg有害というのは通常、毒素の同義語ですが HABの有害な影響は他にもあります。恐ろしい影響の一つに、図3に見られるような魚の大量死があります。これは2011年、米国オハイオ州のグランド・レイク・セント・メアリーズ湖です。このようなシナリオは以前は稀でしたが、最近では毎年米国の多くの湖で観察されています。こちらのケースや淡水HABのケースで興味深い現象としては、毒素が魚の大量死を招いたのではないということです。むしろ、異常発生の結果作られた無酸素状態が原因でした。異常発生が治まり始めると、死んだ藻類が湖の底に沈み、従属栄養細菌により食べ物に分解されます。この分解プロセスは酸素を消費するため、死んだ藻類バイオマスが大量に分解され、酸素が枯渇したのです。こういった魚は水中の酸素枯渇により実際には窒息死したのです。

異常発生の他の有害な結果として、味・匂いの化合物であるジオスミン、メチルイソブチルケトンなどの揮発性分子を含む可能性があります。こういった化合物は人間が最初に検知するng/L範囲にないため毒性がありません。しかしながら、飲料水を飲んだお客様から水の匂いや味が泥のようだとクレームを受け、水源管理者は頭痛を感じるかもしれません・・。

水源が娯楽として使用される場合や、商業施設で使用される場合には、異常発生の最終ステージで起きる死滅・腐敗による見た目や臭いによって、経済的影響が考えられます。最終的に、湖や貯水池の底でバイオマスの蓄積が従属栄養性の分解を上回るので、浚渫が必要となる場合があります。HABの発生により、水源管理者には非常に厳しい結果が起こり得ます。有毒な影響が制御不能となる前に、反応型ではなく積極的に対処することです。

何をモニターするべきか?

予防は常に一番の薬ですが、地表水管理者は流域のHABを増大させる栄養物の流出を防ぐ手だてが常にあるわけではありませんし、また、HABの一因となりうる気象条件や環境的要因を制御することも不可能です。早めの検知により戦略を練り、観察結果により処置や緩和策を用意しておくことができます。HABの早めの検知には、何をモニターするべきか、そして何故かをお話しましょう。

フィコシアニンやクロロフィルなどの色素は、HABモニタリング戦略においては不可欠です。クロロフィルはほぼすべての藻類、もちろん植物にも見られます。フィコシアニンは藍藻類に特有の特徴です。クロロフィルは水生系での藻類の成長を見るため何十年にもわたりモニターされてきました。サンプルを収集し、ラボで分析されていました。フィコシアニンは新しい技術の開発とともに、近年モニタリング戦略に追加されました。どちらの色素も、現在では測定現場にて高感度センサーを使用し検知可能です。これによりラボでの色素分析に費やす時間を省きます。シーズンオフ中に、色素のベースラインが確立される必要があり、そのベースラインからの逸脱がシアノバクテリア増加の最初の警戒信号となります。更に、フィコシアニンがあるからと言って、毒素の異常発生が差し迫っているとは言い切れません。(前述した有毒でないユレモを思い出してください)しかし、フィコシアニンが存在しなければ、毒性の藍藻類が存在する可能性は低くなります。

毒素そのものは常にモニターする価値があります。娯楽施設用の飲料水用貯水池や表層水では特にです。相当な投資が必要かもしれませんが、毒素分析にはラボと経験豊かなスタッフが必要です。 水質管理の観点から言うと、色素モニタリングにより藍藻類が増殖していることが明らかになった場合には、毒素(ミクロシスチン、シリンドロスパーモプシン、アナトキシン)を測定することが更に実用的です。

HAB発生要因の可能性をモニターする低価格の長期モニタリング項目には、管理者にはすでに一般的な、標準的水質項目が含まれます。水温測定は有効です。ミクロキスティス・エルギノーザなどの悪名高いシアノバクテリアは、水温30度以上を好み、30度を超えると急激に成長し、システム全体に急速に拡がります。このためHABは温暖な気候の夏場に発生するのです。 

exo2-3qtr-wiped-ct.jpg溶存酸素とpHも大いに関係があります。藻類が成長すると、pH値が10-11ほどに急速に上昇します。これはHAB発生に顕著な特徴で、藻類による溶存二酸化炭素の消費に関係しています。異常発生の後期になると、発生中の藻類が酸素を消費し、更には水底に沈んだ藻類の死骸を分解する際に従属栄養細菌が酸素を消費するため、溶存酸素は減少します。前述した通り、こうして魚が酸素不足に陥り、淡水における魚の大量死の主な要因となります。電気伝導率も継続モニタリングすると良いでしょう。淡水システムの特徴として、低い電気伝導率を示した場合、藍藻類の成長にとって好ましいと判断できます。

濁度は藍藻類の増殖をモニターする代理測定となり、藻類の増殖を助ける栄養物流出を示唆します。ラボと協力して、栄養物の測定を直接行う管理者もいます。アンモニウム、硝酸塩、全窒素、全リンはすべて有効な測定項目です。有毒の藍藻類の成長を刺激する可能性があるからです。

結論

というわけで、ここまでで明らかなように、データ収集のお話をしてきました。異常発生か、異常発生でないかを見分ける数値は特にありません。長期にわたって各地点の観察を続け理解をすることで、ヒントとなる特有のパターンが浮き出てくるでしょう。モニタリング最初の1年は基準値が設定されるため、非常に重要です。毎年、観察地点の理解が深まり、どのパターンが意味を持つのかが分かります。このようにして、水質管理者はシステム全体を完全に覆いつくす前の対処可能な段階で、異常発生の兆候を積極的に検知することが可能です。

対処には様々な方法があり、飲料水管理者等に向けた完全マニュアルをご用意しています。HABの影響を受け得る水源にこういったモニタリング法を推奨させていただきます。モニタリングによって効果的で、データ主導の戦略の基礎を作っていただければと思います。